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株式会社TBWA\HAKUHODO
〒105-0023東京都港区芝浦1-13-10第三東運ビル

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株式会社TBWA\HAKUHODOのオフィスデザイン

“DISRUPTION”から生まれたオフィス

 今までにない、まったく新しいアイデアで既成概念に挑戦し、ルールを変えていく事をビジョンとする外資系広告代理店『株式会社TBWA\HAKUHODO』。2006年8月1日に博報堂100%出資子会社である株式会社博報堂ジーワンと、TBWA Worldwideの日本法人TBWA\JAPANが統合して発足した同社は、「The Most Innovative Company(最もイノベーティブな会社)になること」をビジョンとして定め、今や数々の名だたる賞を受賞し、唯一無二の存在として自らも時代と共に変化し続けている。
そんな同社の発想のメソッドは「DISRUPTION(創造的破壊)」つまり、“既成概念を破壊する”ということ。完璧に破壊するのではなく、必要な部分は残しつつそれ以外の不必要な部分を削ぎ取り、その上に新しいものを作るという意味がある。その“創造的破壊”の先に生まれる新たな“何か”を常に追い求め、日々邁進する同社にとって、オフィス環境というのはどのくらい重要なものなのか。クリエイティブの場としてのオフィスに対する考えを、総務部長の東海正光氏とTBWA\HAKUHODO\QUANTUMマネージングディレクターの及部智仁氏に伺った。

<<なぜオフィス環境へ投資したのか>>

 全く異なる言語、全く異なる文化を持つ二つの広告会社が統合してできた同社は、2006年設立当初、田町と銀座の二拠点に分かれていたところを翌年2月に現在入居するビルに統合移転。「“融合”が“触発”を生み、リラックスしてクリエイティブできるパーク」をオフィスのビジョンとし、5階・6階の2フロアを改装したその後も、2012年3月に同ビルの1階、そして2014年3月には新たに9階にまでオフィスを拡張。その大がかり且つ、長期に渡る環境投資の背景とは。

東海氏: 最初、5階・6階は内資(博報堂)と外資(TBWA)という二つの会社を融合させて一つにするということがきっかけだったんですけど、結果、ただ足して一つになったわけではなく、完璧に融合した“文化”になったので、次はその新しい“文化”を発信していこうということで、マネージメントも大賛成の中、1階への投資を決めたんです。
世の中の多くのジョイントベンチャーで何が失敗したかというと、数字上や会社名だけ見ると二つの会社が一つになっているだけであって、ほとんど文化の交流がなかったんです。だからこそ、5階・6階を作る時には“融合”というキーワードを非常に大切にしました。結果的に二つの文化が融合し、そこで生まれた新しい文化を発信するためにと1階を作りましたが、その次の段階では「人を育てて弊社の文化を外に持っていこう」という目標をたて、2014年に新たに9階を作りました。
今回の9階の増床で「日経ニューオフィス賞」の受賞は3回目なのですが、一つの企業で3回の受賞ってほとんど無いんです。それぞれ別のコンセプトで、時系列で企業の成長と共にオフィスが変化しているのはうちだけだと思います。

及部氏:クオンタムは、私たちが広告という領域を超えたビジネスに挑戦するために設立した組織です。我々は、生活者発想でCMを作ってきたけれど、最近では時代とともにメディアやCMの価値や役割が変わってきました。今までは「生活者発想×メディア」だったのが、「生活者発想×?」になってしまったんです。そこで我々は、その掛け算の先は“テクノロジー”じゃないかと考え、そこを見れば新しいイノベーションががたくさん生まれるはずだという発想に至ったんです。そういう着眼点で、オープンな環境でイノベーションを生み出す「HCOI(ヒューマン・センタード・オブ・イノベーション)」というのを2010年くらいで考え、そこからいろんなビジネスを考えていったんです。ただ、TBWA\HAKUHODOの社員だけで考えていると、新しいイノベーションプロジェクトを作ったとしても年間で一人3個ぐらいで、3人で9個作っても、うまくいくのはそのうち1個くらいなんです。イノベーションというのはそれくらい難しいものなのです。そして社内で検討した結果、「ベンチャーとのコラボレーションでもっとイノベーションの数を多く生み出せないか」という発想に至り、2014年に新組織として「TBWA\HAKUHODO\QUANTUM」を立ち上げ、サービスを提供する場として新たに9階のインキュベーションスタジオを作ったという経緯があります。

<<オフィス環境変革後の変化や反響>>

 「オフィス環境は会社そのもの」と考える同社では、“人”が資産であり、いかにクリエイティブなアイデアを生み出すかが問われる。創造的なワークスタイルを支える環境、才能ある人を維持し、獲得するための空間作りを常に目指し、オフィス環境に投資をしてきた同社では、度重なる変革の後、社員にどのような変化があったのだろうか?また、クライアントを多く抱える同社では、社外からの反響というのも気になるところだ。

東海氏:一番基本的に変わったなと思うのは、自由に自分の場所を選んで仕事をしているなということですね。昔は(自分の席を離れることでさえも周りを気にしていましたが、今は皆自由にやっているようで嬉しいです。
5階・6階部分もコミュニケーションをとるためにはフリーアドレスがいいという意見もあったのですが、それにしてしまうと結局仲良しチームが固まって座ってしまい、私たちのコンセプトと離れてしまうのではないかと考えました。そこで、逆にあえて固定席を持たせて、リラックスしたい時には自由に階段に座って仕事をしたりできるよう、意図的じゃなく自然にそういう空間を作ったらどうだろうかということで、KDa(クライン・ダイサム・アーキテクツ)さんから今のような提案をされました。その意図通り、階段で仕事をする社員は結構いますね。6階でソファに座って仕事をする姿も嬉しく見ています。
社外からの反響としては、オフィスを見に来るクライアントが非常に多くなりました。関係会社もそうですし、ビルのオーナーの方からも「お客様を連れていきたいんだけど」と言われたり。同じビルで賞を3つもとっているのでオーナーさんにも凄く感謝されています。また、昔はこちらから先方に伺って広告の提案をして仕事をもらってくるということが多かったのですが、オフィスを改装してからは弊社への訪問数が確実に増えていますね。今は、「こういうオフィスを作る会社なら、安心して仕事を任せられるよね」、という感じをうまく作れていると思います。
また、オフィス見学を希望される方が全国各地、かなりいろんな所からいらっしゃるのですが、そういった声には柔軟に対応しています。写真では見てる人が多いのですが、実際来てみるとまた違った感じで、クリエイティブな会社だということを実感するというお客様はよくいらっしゃいますね。

及部氏:皆さん驚かれますね。「広告会社としての新しい形だね」とおっしゃって下さることも多いですし。イーソーコ・グループさんのご協力のもと、我々がリーン・スタジオと呼んでいる9階のスタジオを作った後に、マイクロソフト、Google、Amazon Web Services、岡村製作所、Wantedly、さくらインターネットといった企業が「我々もここをサポートします」と言ってくださって、ベンチャーだけでなく、ベンチャーを支援する側の方がまず応援して下さっているんです。また、各大学発のベンチャーや研究室などがここに来てくれることで、今までそういったオープンイノベーションの場があまりなかったということもあり、注目されていますね。あとは、今ダイドードリンコさんの自動販売機をベンチャーと作るプロジェクトをしているのですが、その情報を聞きつけたいろんなベンチャーが「そんな場があるのか」と連絡してきて場所を見学してくださったりと、まさに、「0」と「1」を重ね合わせることができる“QUANTUM”という名の通り、本当にいろんな方が混じり合う場所になりつつあります。名前に込めた量子ビットに代表されるQUANTUM(量子)の性質は、「0」と「1」のような従来の考え方では想定できないような性質を「重ね合わせる」ことなんですが、コンセプトを体現している場所ですねと言われています。場所を作ったことによって、物凄く人との交流が多くなったような気がします。採用面での反響もあるようで、面接にいらした方には皆さんに「良いオフィスですね!」と言っていただけますね。
社内に関して言うと、このフロア自体は元々広告を超えるビジネスをするために作ったので、実際広告の制作をしているクリエイターたちがここに来て、3Dプリンターなどを見てインスピレーションを受けて広告を作ったりすることもあるようですね。割と良い循環も生まれているかなと思います。

<<既成概念の破壊>>

 同社の発想のメソッド「DISRUPTION(創造的破壊)」は日常の業務だけでなく、オフィス環境作りにも取り入れられている。環境という意味では、社内のデザインや空間作りはもちろんだが、それ以前の“物件選び”の段階から「既成概念の破壊」は始まっていたのだ。2007年に改装した5階・6階はボーリング場予定地だった場所であり、その後2012年に増床したのはなんと元ジュリアナ東京だった場所だというから驚きだ。あえて変わった場所をオフィスとして選んだ背景には、どのような考えがあったのだろうか?

東海氏:我々には「DISRUPTION(創造的破壊)」というメソッドがあるので、オフィスの選択の際もそれを取り入れていこうと決めました。規制概念に縛られてオフィスを作ろうとするとどこにでもある同じようなものになってしまうので、そういうのはやめようと考えていました。自分たちはその既成概念を壊して、違った観点でオフィスを探そうということでいろいろと訪問しました。廃校とか、スーパーの跡地とか、いろんなところを見たんですけどなかなかしっくりくるところがなくて、そんな時に紹介されたのが今のこのビルでした。従来の多くのジョイントベンチャーのように失敗しないオフィス、つまり、内資・外資関係なく、文化が完璧に融合し、触発し合って新しいものを生み出せる器としてのオフィス探しをしていたので、ここはみんなが望んでいたコンセプトに素晴らしく条件が合致していたんです。
天井が高くて柱も壁もなくて。「おはようございます」って入った瞬間にいろんなところからみんなの顔が見えるという。今までの文化だと、「おはようございます」と言った瞬間にみんな別々の部屋に分かれていって、一日顔を合わせなかったりしていましたからね。
“触発”と“融合”を考えた上では、大空間の中であれば、みんなが自然な語らいができるのではないかという考えに辿り着いたんです。そこから「公園」のイメージが出てきて、KDaさんとデザインを考えていきました。
増床した経緯というのも非常に面白くて、私たちは増床するにあたってこの時もいろんな物件を探していたんですが、どうしても5階6階部分から離したくないということで、同じビルで物件はないかとずっとオーナーに打診していたんです。元々“ジュリアナ東京”だった1階のエリアには、当時すでに店舗が入っていたのですが、2011年秋頃にその店舗が退出すると決定されて、一番最初にオーナーから私の方に「空く予定があるよ」と連絡が来たんです。それを私がすぐにマネージメントに提案し、結果的に元々“ジュリアナ東京”だった一階を発信基地のシンボルとして使わせて頂くことになったんです。

及部氏:私たちの会社のふたつの母体のひとつであるTBWAって4人で作った会社なんですよ。北米では尖っているエージェンシーとして有名だったんです。彼らはクリエイティブを物凄く大事にするので、普通のオフィスビルに入るのが凄く嫌なんですよ。なので、TBWA\HAKUHODOを設立する時にも、「いわゆるオフィスビルには入るな」、ということで、ボーリング場の予定地だったところにオフィスを構えることになったと聞いています。
あと、世界のTBWAネッワークの中でも斬新なクリエイティブで評価の高いTBWA\CHIAT\DAYの社旗は、パイレーツ(海賊)のマークなんですね。海軍というのは規律正しくスーツを着てばしっとする感じの集団だと思うのですが、我々は海軍に対して、何をするか分からない海賊の様な面白い集団になろうということで、海賊旗が用いられているんです。クリエイティブのマインドを作るような仕掛けづくりをいつも行っているカルチャーを持ってるのがTBWAなんですよね。
そこで、TBWA\HAKUHODOとしても、DISRUPTIONやパイレーツ魂、を中心に置いて、「単なるエージンシーじゃなく、自ら事業も行い商品も作る、最もイノベーティブなカンパニーになろう」ということを考えました。そういうビジョンをCEOの座間が指示し、この考えがオフィスにも体現されていると思います。

<<コミュニケーションとコラボレーション>>

 同社は2007年に「経済産業大臣賞」と「クリエイティブ・オフィス賞」、2012年に「ニューオフィス推進賞」、そして2014年に「関東ニューオフィス奨励賞」というように、日経ニューオフィス賞だけでも3度の受賞を達成している。企業の成長と共にオフィスを変化させてきた同社が、そのオフィス環境を作り上げる際にこだわった点とはどのような所なのだろうか?

東海氏: このオフィスのこだわりは、みんなが家族として、出勤したら一ヶ所に集まれる場所をポイントとして作っていることですね。大階段を下りたところにあるカフェカウンターは、朝来た時にパンが並んでいて、食べながら自然に語らえるようにしています。社員同士が他部署にいるとなかなか会えないですよね。でも、この会社はあそこがあることでかなりみんながコミュニケーションをとれていることがこだわりですね。1階も同じ考えで、バーラウンジを設けてコミュニケーションを図れるようにしています。9階はラボなので一見そういうものがないように見えますけど、入口から入っていろんな過程で人が育っていく姿が見えるようになってるんですね。成長していく過程で、悩んでいることがあれば途中で私たちのチームが協力してサポートできるようになってるんです。何が必要かということで、何度も話し合った上でできたオフィスですね。
私たちはオフィスを作る時、いつも人任せにせず、各部署からランダムに選んだ人たちでプロジェクトチームを組んで、自分たちがどんな家に住みたいかを決めるんです。何度もモックアップを入れて、「このように作って下さい」とお願いしたので、デザインが決まったらあとの進行は早かったです。私たちにはアイデアはあるけど理論はないので、そこのサポートをデザイナーにして頂いたという感じです。
また、私たちのチームにはファシリティー担当のチームがいるんですけど、そこが毎日オフィス内の温度だったり照明だったりいろんなところをチェックして回るんです。オフィス内の温度に関しては、一日9ヶ所計って歩いていますね。そういった中で、何か要望があれば拾ってきてどうするかを考えたり、小さなことかもしれないですが毎日オフィスの改善をしていますね。大きなレイアウト変更は年に一度必ずありますけど、小さい改善は日々みんながやってます。

及部氏:9階のインキュベーションスタジオに関しては、表面的なオフィスっぽい感じではなく、ベンチャーが生まれるようなむき出しのガレージ感を大事にしようということで、それを作れる建築家を探し、吉村靖孝さんにお願いしました。まだお若いけれど感覚的なセンスがあり、限られた予算を最大限活かし、すばらしいオフィスを設計をしてくださいました。。
シリコンバレーに行くと”Lean Start up”っていう「いかに無駄なく、はやく、モノを作れるか」という考え方があるんですね。アイデアを考えてそれを形にしたものをすぐにユーザーに見せて、フィードバックを貰いながら完成させていくのが“Lean Start up”。その流れを実現した場所が日本にはなかったので、一回作ってみようということになりました。それが建築的なこのインキュベーションスタジオのオリジナリティですね。あとは、普通のインキュベーションオフィスというのは、工房は無いんですよ。でも、シリコンバレーを回っていた時に結構工房があったりしたので、9階にもそれを取り入れて、“Lean Startup”ができる環境を作ったことが一番のこだわりですね。
また、9階の家具は全部岡村製作所のものなんです。1・5・6階でも岡村さんの家具を導入しているのですが、9階に関してはビジネスに直結しているんです。現在岡村さんと一緒に、未来のオフィス家具を考えるというビジネスをやっているのですが、そのパートナーとして「これからのオフィスの在り方を考えていきましょう」ということで契約をして、岡村さんの家具を使わせていただいているんです。

<<今後取り組みたいオフィス環境づくり>>

 「変革」を生み出すためには、人と人との親密な関係が重要であると考える同社は、様々な人々が集まる“街”のようなオフィスを半年弱という短い期間で見事に作り上げた。しかし、竣工時の姿はもうそこにはなく、使い勝手が悪い所はどんどん手を加えて変化させているのだという。オフィスを自分たちの“家”と考え、常に住みやすい環境作りを行う同社では、今後の環境変革についてどのように考えているのだろうか。

東海氏:5階・6階部分はすでに8年目に入り、中の人の生活が変わってきているので、あの器自体を変化させざるを得ない状況になってきています。今考えているのは、2007年に「経済産業大臣賞」をもらってはいますが、中で生きている人の生活が変わっているのですからオフィスも当然進化させなければいけません。設立当初は290名だったのが今では400名になろうとしていますから、スペース的にも業務環境的にも働き方も変わってきてますので、そろそろ変える時期かなと思ってますね。ニューオフィス賞とったところを再度リノベーションして、もう一回賞を取りにいってもいいと思いますけどね(笑)。
基本、私たちはオフィスは生きているという形で考えています。なので、中の人の歩調やワークスタイルに合う形でオフィスも在り続けて欲しいなと思っているので、今からまたどんどん変えていくと思いますね。

及部氏:一番取り組みたいのは、最新のデジタル・ファブリケーションツールの導入と工房をもっと大きくすることですね。レーザーカッターが今ありますけど、IoT(インターネットオブシングス)の時代においてメイカーズの流れは今後かならずビジネスになると思います。またハードウェア・スケッチと呼ばれるデザイン思考で求められるスキルを日々高めるためにも、デジタル・ファブリケーションツールのアップデートは今後も必要と考えています。

<<Pick Up>> “ここが、TBWA\HAKUHODOらしさ“

■イベントでも活躍するディスラプション・コート
・TBWA\HAKUHODOのカルチャーの根底にあるのはTBWAネットワークの哲学である「DISRUPTION(創造的破壊)」。5階の中央にあるスペースは、ディスラプション・コートと呼ばれ、物理的にも社員の気持ちの上でもまさにオフィスの中心にある存在。このスペースで朝は朝食のために社員が集まり、昼はミーティングをしたりPCを持ち込んで仕事をしたりしているというだけでなく、月に一度は他部門の成功事例を共有したりする全社ミーティングも行われている。また、年末の週末には社員が家族や友人を招いてクリスマスパーティーを行うそうでホテルの宴会場では実現できないユニークなパーティー会場に変身するという。社員はTBWA\HAKUHODOを略してTHと呼ぶことが多いそうだが、Think Happyの略でもあると言う通り、毎日楽しく働いているようだ。