株式会社SmartHRのCTO芹澤 雅人さんに、SmartHRの開発組織について、働き方や働く環境、大切にしている思想、SmartHRにフィットする方などをインタビュー。
「社員のことは信じているから、事前に確認を取ったり、許可を得てから行動をするカルチャーではない。」と言う。
また「納得感のないモノづくりは絶対にしたくないから関係者全員が納得して、同じ目標に向かって動いていくことにこだわっている。そして、それができるのがフラットでオープンなSmartHRのカルチャー」と語る。
SmartHRの開発組織について、CTO芹澤 雅人さんに教えてもらいました。
フラットでオープンな開発組織。それは信頼しているから。
――SmartHRのエンジニア組織について教えてください。
SmartHRは、プロダクト単位でチームが分かれていて、エンジニアだけではなく、プロダクトマネージャーやデザイナーなどさまざまな職種が1つのチームに属しています。そういったプロダクトの開発と運用に関わるグループを、ひとくくりにプロダクトサイドと呼んでいます。
――プロダクトサイドにはどういったメンバーが。
プロダクトサイドには、プロダクトマネージャー、プロダクトデザイナー、プロダクトエンジニア、QA、カスタマーサポート、ドメインエキスパートといった職種が存在しています。
チームごとに最適なメンバー配置となっていて、大きいチームだと20名以上、小さいチームだと3名くらいで構成されています。
――SmartHRはオープンなカルチャーがある印象ですが。
そうですね、会社のカルチャーと同じで、プロダクトサイドでもオープンでフラットな組織になっています。
――“オープンな組織”について具体的なエピソードはありますか。
例えば、「ある機能を作りましょう」となったとき、SmartHRでは、「事業計画的はこうなっている」とか「お客様からはこういう要望がきている」、「ある会議ではこういう議論がされた」など、その意思決定に行き着くまでのすべての過程が共有されますし、またこうした議論には誰でも参加できるようになっています。
――ひとつ機能を作るとなっても、そこに行き着いたすべての過程をオープンにするのですね。
そうですね、SmartHRに入社したての方にはとても驚かれます。
彼らに転職理由を聞くと、「よくわからない理由でモノを作らされて困っている」や「現場では作らないほうがいいと思うのに、会社で発言が強い人の一声で作らされる」といったものがありました。
また受託開発の場合は、そもそも自分達で開発するものを選べない状況です。
そんななかSmartHRは、開発の経緯が全てオープンに共有され、かつ、その意思決定にも関われるというのが特徴的なカルチャーだと思います。
――“フラットさ”というカルチャーではどんなエピソードが。
なにかを議論する際は、現場のメンバーで主体的に行われていて、マネージャーは意思決定を後から報告されて問題がないかどうかを確認するスタンスでいます。
事前に確認を取ったり、許可を得たりして行動をするということはありません。
もちろん、組織として階層はありますが、それは例えば「Aさんは偉いから発言力がある。言うことは聞かないといけない」といったことはないですね。
――どうして意思決定は事後報告で大丈夫なのですか。
社員のことを信じているからです。
僕は、“問題に直面している人のほうがより良い解決策を考えてくれる”と思っています。
問題に対して僕より長い時間、本当に真剣に考えてくれていると思うので、そういう人たちの判断に間違いはないと思っていますし、大きな心配はありません。
また仕組みとして複数人でレビューをしたうえで意思決定するプロセスも根付いているので、誰かの独断で何かが決まるということがないのも安心して任せられる要因の1つです。
――社員を信頼して現場に任せているのですね。
そうですね、僕のこれまでの経験でもそうですが、やはり納得感を持ったうえで開発することはとても重要だと思っています。
納得感のないモノづくりは絶対にしたくないので、関係者全員が納得して、同じ目標に向かって動いていくことにこだわっています。
それができる環境、カルチャーがオープンでフラットなSmartHRの特徴だと思います。
――そんなSmartHRの開発組織をマネジメントするうえで意識していることはありますか。
トップダウンではなく、権限委譲を大切にしています。
きちんと権限を委譲して、目的を持って取り組んでもらうことで、いいモノを作ってくれると信じているからですね。
自分が責任を持って採用した人たちなので、疑わずに信じて、僕はみなさんが気持ちよく働けるような環境の整備に注力するようにしています。
――今後の組織のあり方として展望はありますか。
事業を成長させていくために、どんどん人数を増やしていくことは間違いないですね。
会社が成長していくと、「人数が増えるとやりにくくなるよね」とか「昔はもっと裁量があったのにルールや規則が厳しくなってきた」みたい声が出てきてしまいがちだと思います。
ただ、僕はどれだけ人が増えても組織が小さかった頃と同じような感覚で、自由に裁量を持って働ける環境はなんとしても実現したいなと思っています。
フルリモートを導入。でもオフラインでの交流はこれからも大切にしていく。
――SmartHRの開発組織はどういった働き方を。
プロダクトサイドは、2021年7月より正式にフルリモートワークを採用することを発表しました。
これまでは都内でしか採用をしていなかったですが、これを機に日本国内いろいろなところにいる方に積極的に声を掛けるようにしていて、実際に採用も進んでいます。
――フルリモートワークを導入するまでの経緯は。
SmartHRは、コロナウイルスが流行する前までは、出社を推奨する文化でした。
週1でリモートワークが使える制度もありましたが、使っている方も少なく、出社して顔を合わせてモノを作るのがスタンダードだったんです。
――それはどういった理由から。
会社として、スタートアップの成長のためには、面と向かったコミュニケーションが大切だという考えを貫いていたからですね。
――そんな矢先にコロナウイルスが流行したと。
そうですね、なのでコロナウイルスは、私たち開発組織にとってはとても大きな変化でしたね。
毎日顔を合わせて仕事をしていたのが、まったく会社に行かなくなってしまったので、働き方はとても変わりました。それがフルリモートを正式に導入するまでの1年半くらいの流れです。
――実際にリモートワークになってどうでしたか。
SmartHRがクラウドサービスを作る会社なので、私たち自身もクラウドサービスを多用していました。出社しているけど隣同士でチャットするみたいな。
なので、いざリモートワークをやってみると、働く場所の違いは大きく影響せず、すぐに馴染めて、ものの数日で今までと変わらない仕事ができるようになりました。
――これからの働き方はどのように。
コロナウイルスをきっかけにリモートという働き方にはなりましたが、これまでの「出社して顔をあわせよう」という考え方からは変わりまして、プロダクトサイドはオフィスに集まることを軸にするのではなく、基本的にリモートで仕事していくという考え方にシフトしています。
――SmartHRに新しく入る方は、リモートだとなかなか馴染めなかったり関係値の問題があったりすると思うのですが。
そうですね、現状のリモートワークがうまくいっているのは、リモートになる前に長い間顔を合わせてコミュニケーションを取ったチームメンバーだからこそ成り立っていると思います。
なので、今後入社する人たちは、日常の業務はリモートでできるかもしれないですが、プロジェクトのキックオフや打ち上げ、懇親会などでたまにはオフィスやどこかで集まるようにしたいと考えています。
リモートでの仕事のなかに対面でのコミュニケーションを挟んで、関係値や信頼関係を少しずつ溜めていきながらバランスを取りたいと考えています。
――仕事をする環境面(福利厚生や制度)ではどのようなところに力を入れていますか。
福利厚生は、「交流の促進」という軸でつくるようにしています。
部活動や打ち上げをするうえでの手当て支給など、部署間を超えた交流をサポートしています。
――「交流の促進」ですか。
そうですね、会社の人数が多くなると、やはり関わる人はどんどん限定的になってきてしまいます。
こうした福利厚生を用意することで、趣味や食事を通して繋がりを持つきっかけになり、「この人ってこういう仕事をしているのか」や「この部署ってこういう雰囲気なんだ」と実際にわかるので、カルチャーの醸成や理解に繋がっていきます。
――それもオープンでフラットなカルチャーに通ずるのですね。
そうですね、ですがコロナウイルスをきっかけに対面での部活動や食事などでの交流はできなくなっています。
――できなくなっているなか、これからはどのように。
会社としては、オフラインでの交流は引き続き大切にし、そのような活動をサポートするスタンスを貫いていきます。
そういった意味で、オフラインでの交流施策や人間関係、信頼関係の構築に重点が置かれる福利厚生が増えていくと思います。
スキルよりも、カルチャーやその人のキャリア観を重視するエンジニア採用
――エンジニアを採用するとき大切にしているポイントはありますか。
カルチャーやキャリアの観点はものすごく大事にしています。
カルチャーでは、その人の価値観や考え方、働くモチベーションといったところ。
キャリアでは、SmartHRで何をしたいのか、SmartHRでどうなりたいのか、その人の働くモチベーションの源泉を重視しています。
――エンジニアとしてのスキルの面ではどうでしょうか。
SmartHRは、外部からの印象として、少数精鋭で優秀な人しかいないみたいに思われることが多いですが、実際にはジュニアからシニアまで様々な方が在籍しています。
スキルに関してはそこまで高いハードルではないです。
――なぜカルチャーやキャリアにこだわるのでしょうか。
僕たちの開発スタイル、SaaSのビジネスモデルは、長い期間をかけてじっくりと成長・ご利用いただくもので、例えば10年くらいの長期スパンでの戦い方になります。
そのため従業員の方には長く働いてもらい、活躍もしてほしいです。
スキルについてはなんとかすれば身につくと思っていて、それよりも「その人の意欲はどうなのか」や「会社やチームに馴染めるのか」をすごく重視しています。
「この人と長く一緒に働けるのか」というのが採用するときにとても大事になるのです。
逆にすごく技術的に優秀な方でも価値観が異なる場合は、SmartHRに来ない方がお互いのためになるという判断をすることもあります。
――カルチャーでもそうだと思いますが、個人プレーではなく、チームプレーを重視されているような。
まさにそうですね、少数のスタープレーヤーが活躍するというよりは、チームで目標に向かって進み達成していくことが多いです。
――SmartHRにフィットする方を見つけるために、どのようなコミュニケーションを。
質問としてはすごくシンプルで、「今後何したいですか」や「なぜSmartHRなのですか」、「SmartHRの7つのバリューについてどう思いますか」のような質問をして、そこを深ぼっていくスタイルです。
――そのような質問をしてどんなところを見ているのでしょうか。
きちんと自分の言葉で話しができ、深ぼったときにロジカルに考えて発言ができているかです。
常に一本筋を通って理路整然と会話ができるかというところを重視しています。
そうしたことができないとチームでの議論が難しくなると思うからです。
――最後に、SmartHRでエンジニアが仕事をする魅力ってなんでしょうか。
情報がオープンになっていて、上下の考えがないフラットなコミュニケーションができるカルチャーだからこそ、本当に納得のいくモノづくりができる。それがSmartHRでエンジニアが仕事をする魅力だと思います。
株式会社SmartHR CTO 芹澤 雅人さん
株式会社SmartHR 取締役 兼 CTO(最高技術責任者)。
2011年よりナビゲーションサービスを運営する会社にて、経路探索や交通費精算、動態管理といったサービスを支える大規模な WebAPI の設計と開発に従事。
2016年2月にSmartHR入社、開発業務のほか VPoE としてエンジニアチームのビルディングとマネジメントを行う。
2020年11月現職に就任し、現在はプロダクト開発・運用に関わるチーム全体の最適化やビジネスサイドとの要望調整を担う。