ミクシィCTO 村瀬龍馬さんに、ミクシィのエンジニアの働き方やCTOが考える一緒に働きたい人、エンジニアがミクシィで働く魅力についてインタビュー。
「チームで成功しているなら働き方はなんでもよい。重要なのはオフラインとオンラインの役割をしっかりと判断して、個人がチームを見ながら、事業を見ながら自分の裁量で働き方の最大化を図っていく。」と語る。
ミクシィの開発組織についてや大切にしている思想、エンジニアがミクシィで仕事をする魅力などをを聞いた。
オフラインとオンラインの役割を意識し、自分と自分以外が働きやすい集団を。
――コロナ禍でミクシィのエンジニアはどのような働き方をしていますか。
現在会社としてオフィスワークとリモートワークを融合した「マーブルワークスタイル」を導入しています。エンジニアもそれに則って現状は出社日とリモートの日を各プロジェクトごとに設定している事が多いです。
例えば火曜日だったら、モンスターストライクの人たちがオフィスに集まる、というようなプロジェクトごとの動きがあるため、それに合わせてエンジニアも誰がいつ来たほうがいいのか、を考えています。もちろん個別で出社の判断をしてもいいです。
――プロジェクトごとに設定しているのですね。
すべてではないですが、そうしている事業部が多いですね。どうせ集まるのであれば、雑談も含めていっぱい人と喋って信頼関係を高めたり、次のオンラインでの仕事につなげるために会話をしたほうが良いと思っています。
特に我々ミクシィは「フォー・コミュニケーション」を企業ミッションに、様々なコミュニケーションサービスを提供している会社なので、対面での顔を合わせたコミュニケーションも重要だと考えています。
やはり個の時代ではあると思いますが、集団でコミュニケーションサービスを作っているので、個人の欲求だけではなく、集団でものごとを決めてみんなで勝ちに行く、といったことをやらないといけないと思ってます。
――集団でものごとを決めていくんですね。
「これからずっとリモートでいいじゃん」という話もありますが、一人の主観だけで決めずに、チームで決めていれば問題ないです。
マネージャーがチームを見て生産性を最大化をしていくことも重要ですが、一人ひとりが、自分の働きやすさに加えて自分以外の人たちの働きやすさにも気を配り、より良くしていくための判断をしてもらう必要があります。
――現状のエンジニアの働き方をこれからどうしていきたいとかありますか。
チームで成功していればなんでもよいです。(笑)
しかし、忘れてはいけないのが、オフラインとオンラインの役割を認識することです。
――オフラインとオンラインの役割を認識ですか。
はい、オフラインでのインプット、オンラインでの生産性最大化を工夫する必要があると考えています。
例えば、今このインタビューの場にいる人たちは、私の口調や声、表情とかを見て私の情報がインプットされています。その後、帰ってメールでやり取りをしてもインプットしたものを想像しながらメールを見ると思います。
それが、インプット前にオンラインでテキストでのやり取りをしていると、「お疲れさまです」「お世話になっております」だけでも、冷たい人だなと感じるかも知れない。けど、一度オフラインでインプットしておくとメールの見え方も変わると思うんですね。
なので、声や表情、目線などのインプットはオフラインのほうが有効活用できますし、またオンラインとオフラインのベストなやり方がわかると、これまで以上に成果を出す組織になれると思います。
――分かりました。ちなみにオフィスへの出社、という観点ではいかがでしょうか。
オフィスのあり方でいうと、手前味噌で恐縮ですが弊社の新オフィスはすごい良いオフィスだと思うんです(笑)
なので、気晴らしや集中するため、散歩するためでもいいので、自分の生産性を高めるためにオフィスを使ってほしいです。もちろん今は安心安全が第一なのは前提ですが。
そして、個人だけではなく、集団での生産性も高めるために食堂で一緒にランチを食べたりしてオフィスを使ってもらえると嬉しいです。
個人がチームを見ながら、事業を見ながら自分の裁量で生産性の最大化を図っていけるのが理想ですね。
――ありがとうございます。次にミクシィのエンジニア組織の特徴について教えてください。
そうですね、いくつかありますが、まず一つはエンジニアとしてキャリアアップができる環境・制度があることです。
細かくは言えないのですが、動いている事業数はローンチ前のものも含めて2桁はあります。そのためどういうキャリア形成をしていきたいか、どういう技術を身に着けたいかを1on1で話をして、その人にあった事業や課題、プロジェクト、プロダクトにアサインをしています。
例えば、「将来起業したいです」という方がいたら、その人の背中を押すために技術だけではなく経営やマーケティング、事業立ち上げの知識などの話も積極的にします。ミクシィにいる間はしっかりと会社に貢献してもらい、将来その人が持っているプランを導いていける組織を目指しています。
会社の制度としても、自分の意思で社内異動ができるミクシィ・キャリア・チャレンジ(mcc)があります。毎月社内限定で募集ポジションが公開され、正社員なら誰でも自由に、所属している上司に断りなく応募ができる制度です。自分の描いたキャリアを実現するために、自分の判断で異動ができるこの制度も従業員のキャリアアップを支える制度だと思います。
――上司に内緒で良いんですね。他にはありますか?
制度ではなく文化的な特徴ですが、社内外でエンジニア同士の勉強会が盛んに行われています。
半期ごとに全エンジニアが集まり、開発進捗やスキルの共有を行うエンジニア総会を開催していますし、テーマごとに有志で勉強会をしていたり、最近では他社のエンジニアと豪壮な勉強会を行っていたり、スキルを磨く場が社内に多々ありますね。
スキルを共有する文化は、コミュニケーションを大切にしている会社だからかもしれません。
――なるほど、言語の選定など開発方針はどうでしょうか?
ミクシィは動いている事業数が数多くありますが、実は会社として決められた開発方針はありません。
そのサービスを開発する上でどのような言語が最適か、使うユーザーにとって何がベストかを担当するエンジニア自身が考えて、どのように開発を行うかを決定します。
そのため自由度はありますが、常に新しい技術を学ぶ必要があるため、自ら学び、新しいチャレンジをしたい人にとっては良い環境ではないかと思います。
一緒に働きたい人の特徴は2つ。“何かに長けている”と“自分が知らないものを持っている”
――村瀬さんはどういった人と一緒に仕事をしたいですか。
会話をしていると、何かしらその人に対して魅力を感じることが多いので難しい質問ですね(笑)。ただ、共通するポイントは2つだと思っています。
まず、何かに長けていること。何かに深堀りができた人は、考える力もあり、経験値としてのアイデアを持っているので、一緒に仕事をしていて楽しいですね。
そして、自分のバイアスをある程度排除する術を持っていて、いろんな情報を仕入れながら判断できる人です。
完全には難しい話ですが、いわゆる自分の過去の経験も含めた固定観念にとらわれず、変化していける人が私としては一番一緒に働きたいと思います。
こういう人は、その人の感想ではなくて、いろんな情報をうまく整理し組み合わせて「こうゆうことだよね」って率直に意見を言ってくれるので、私に対しても「こうなった方がいいんじゃないですか」って言ってくれるんですよ(笑)
何かに長けていて変化していける人は、情報の精度が高くて、バイアスに縛られにくいのでむちゃくちゃ一緒に働きたいです。
――2点目はいかがでしょう。
“自分が知らない分野、知識、経験を持っている人”です。
ずっと一緒にやってきたメンバーと新しいアイディアを出すと、一定回答に想像がついてしまうようになってしまいます。
なので、「こんな業界ではこうゆうのがあって、これってもしかしてここに応用できるかもね」とか、「この技術で使われているこの部分をこう応用するとマッチするかも」など、みんなが想像できないところから分解してもってくるような、どんどん多様なアイデアを出し合えると嬉しいですね。
多様なアイデアをたくさん得られるというのも会社に所属するメリットだと思います。
――ポイントは2つですね。
なにか過去の経験とかに縛られず、なにかを変えていく想いがある人。
そして、自分たちが持っていないものを持って率直に喋れる人。そういう人たちと一緒に働けると嬉しいなと思います。
スペシャリストと一緒に働くことがスペシャリストへの道
――エンジニアがミクシィで働く魅力はなんでしょうか。
外部から見たらゲーム屋さんっぽい見られ方をしますが、事業領域は幅広く、事業数も多い会社なので、「情報を応用して新しいものを見せていけるチャンスがある」というのが魅力だと思います。
例えば、ゲーム業界で働いている方は、ゲーム技術以外には触れずに過ごすことが多いと思うんです。
ミクシィはゲームだけではなく、スポーツやエンターテインメント、ライフスタイルといった領域の情報も手に入るので、いろんな形の熱狂や遊び方、興奮のさせ方を学べます。
更に技術を他業種に展開し活かすことで、競合との差別化を生み、新しい見た目や手触りなども提供できます。ゲーム技術は色々なところで応用可能です。
いろんな業界の知識を入れたうえで、自分が技術選定を行う際に、たくさんある情報をどう組み合わせて、最適解を出すかという能力が培われます。
――働き方の観点ではいかがでしょうか。
繰り返しになりますが、ミクシィには多くの事業があるので、様々な分野のスペシャリストが集まっています。そのため、自分のキャリア形成や人生設計において幅広く知識を得たいとなったら、その筋のスペシャリストと一緒に働けるのは大きな魅力だと思います。
例えば、モンストの大規模なバックエンドを支えていた人が、ゲームやゲーム以外の新規事業でモンストのノウハウを生かして、それが適用されているみたいな。そんなアーキテクチャが見れるのは多分うちだけです(笑)
大きなところからの反省点を活かした次の新しいものや進化を見続けられるのはいいところだと思います。
それに、すごい人たちに囲まれることは、人生においてむちゃくちゃ重要だと思いますので。
――なるほど。すごい人たちに囲まれるですか。
私自身すごく人に恵まれていると思います。
SNS「mixi」を作ったときは、リリース後に急成長をして、大規模トラフィックを捌くためWeb業界のスペシャリストたちが入社してくれました。
そうしたスペシャリストの人たちに囲まれて仕事をしてきた経験が、今でも大きく活きています。
――例えばどんなところに活きましたか。
mixi時代にスペシャリストと一緒に働いた経験があったからこそ、モンスターストライクの急成長を支えられたと思っています。
モンスターストライクの急成長時の分散手法は、ほとんど SNS「mixi」で持っていた資産やノウハウを現状のアーキテクチャに合わせて適用していったものになります。もし経験がなかったら、更にユーザーに迷惑をかけていたことでしょう。
その急成長の分散に関わってきた人たちもSNS「mixi」で活躍していたスペシャリストの人たちが集合して対策したので、これだけの成果をあげられたと思っています。
そういった環境で共に成果を出していけたのは私の人生にとってとても重要でした。
――スペシャリストとの開発経験が成長につながっていると。
例えば、経験豊富なスペシャリストの人たちの仕事をどんどん奪っていき、同じような仕事をできるようになっていくと、自分が最初に思っていたスペシャリストのイメージと同じ位置にいつの間にかいます。
更に、仕事を奪うことで、スペシャリストの時間に余裕ができ新しい凄いことを始めてくれます。そうすると事業も良くなるし、自分も新しい発見ができ、成長できる。
もちろん、スペシャリストが周りにいると、自分もハイレベルにならないといけなくなるので、いろんな学習や経験はしないといけない。けれどそうして努力することで自分もスペシャリストになり、今度は自分が持っている知識や経験を周りに与える側になれると思います。
やっぱりスペシャリストに囲まれるのはすごく重要だと思いますし、ミクシィでなら数多く スペシャリストと一緒に仕事ができます。
株式会社ミクシィ 取締役CTO 村瀬龍馬さん
2005年:株式会社イー・マーキュリー(現:株式会社ミクシィ)に入社。SNS『mixi』の開発に携わる
2009年:株式会社ミクシィ一度退職し、ゲーム会社のエンジニアや役員を経験
2013年:株式会社ミクシィに復帰し、『モンスターストライク』の開発、XFLAG開発本部本部長としてXFLAGのエンジニア全体を統括
2018年:執行役員CTOを務める
2019年6月:取締役CTOに就任
(写真:Kashinaga)