コミュニケーションアプリ「LINE」を中心にインターネット関連事業を展開するLINE株式会社。
国内では「スマホを買ったら、まずLINEを入れる」が主流となって久しく、今や多くの人にとって欠かせないコミュニケーションアプリだが、他にもLINE MUSICやLINE NEWS、LINE Payなど、じつにさまざまな事業を展開している。
そんな日本を代表するテックカンパニー LINEの開発組織内部は、一体どうなっているのだろうか。
LINEの上級執行役員CTOである池邉智洋氏に、開発組織の構造やミッション、やりがいや採用について聞いた。
「場所や国籍もバラバラ」でもプロダクトや目標を共有する大きなひとつのチーム
──LINEの開発組織について教えてください。
LINEの開発組織は、大きい組織体順にセンター・室・チームという単位で構成されています。各法人や事業内容によって違いはありますが、大体センターが100名弱からそれ以上、室が30〜70名程度、チームが数名規模から多くて20名程度で構成されています。
日本各地に拠点があり、また韓国や台湾、タイ、インドネシア、ベトナム、中国など海外にも開発拠点を持っています。開発組織の社員は、部署や役割にもよりますが他拠点のメンバーと協業をすることは少なくないです。
場所や国籍はバラバラでも、ドメインやプロダクトによって分業、協業しながら同じ目標を持って開発する大きなひとつのチーム、というのがLINEの開発組織のイメージです。
──池邉さんの抱えるミッションは何ですか。
さまざまな領域を兼務していますが、大きな役割としてはLINEのヘッドクォーターとしての責任を持つため、LINEの日本の開発組織に所属するエンジニアのマネジメント、各ドメインへの人材の配置などを考えています。また、特にカルチャー面に関して、エンジニアが働きやすい環境や成果が出やすい環境にするために日々試行錯誤しています。
他にも採用や技術面など、幅広い領域について考えながら、開発組織全体を強くしていくことを考えるのが私のポジションになります。
重視するのは「転職して何を変えたいか」、「LINEで働いている想像がつくかどうか」
──エンジニア採用の流れについて教えてください。
弊社の採用ではエントリーいただいた後に、まずはオンラインでのコーディングテストを実施しています。これは新卒でも中途でも変わりません。
このテストをパスしたら、次に現場に近いメンバーによる「技術面接」を行います。主にコーディングテストの解答を軸に質問をし、技術力についてチェックします。
その後、私や他マネジメント層の社員が二次面接もしくは三次面接を担当し、ソフトスキル面やカルチャーマッチなどをチェックするという流れになります。
選考にかかるトータル期間は、大体1ヶ月から1ヶ月半くらいです。
──エンジニアの面接で重視されていることは。
技術の知識面やコーディング能力に関しては、弊社の求める基準が一定程度存在するため、その基準をクリアしているかどうかをコーディングテスト、またその後の一次面接でまずは見ています。
また、ソフトスキル面では「LINEで働いている想像がつくかどうか」を重視しています。弊社では規模の大きい事業を多国籍かつ他拠点のチームで行うことが多いため、その環境の中で上手く仕事をしていけるかどうかは重視して見ています。
具体的に言いますと、コミュニケーションを取る上でどうしても起こり得るすれ違いや齟齬に対してどう対処するか、解決に導く力やまとめていく能力があるかどうかは注視しています。
──採用の際に必ず聞く質問はありますか。
「転職して何を変えたいですか」という質問はよく聞きますね。転職すると色々なパラメータが変化するなかで、「何を変えたくて、何が変わったら今回の転職を成功とみなすのか」について質問することは多いです。
また、中途採用だと経験が面接の軸になると思いますが、これまでの実績や良い面ばかりではなく、「仕事をする上で誰もが経験する困難や苦労があった際に、どう対処したか」を重視して聞いているかなと思います。
──コーディングテストではどういったテストが行われていますか。
エンジニア採用では一般的によく行われるテストだと思いますが、アルゴリズムとデータ構造に関するテストと、「この場合にはどういった設計をしますか。またそれはなぜですか」といった文章題のテストを行なっています。
コーディングテストは「テストケースが通ればそれで終了」ではなく、通った上で、チームで仕事を遂行していく中でのコードの可読性や、変数名の付け方など、その中身を細かく見ています。そのため、一次面接ではコーディングテストの話題がかなりの割合を占めています。
──新卒採用もされていますが、第二新卒の方も採用されていますか。
明確に「第二新卒」と分けて募集や選考を行っているわけではありません。年齢や経験年数で合否を判断することはなく、募集しているポジションの要件に合えば、積極的に採用を行っています。第二新卒だからといって門戸が開いていないわけではありません。
──現在のリモートワークの割合は。
各拠点やチームにもよりますが、LINE株式会社の技術組織の出社率は13%程度となっていて、エンジニア社員の多くはリモートワークをしています。LINEでは現在、出社を前提に置かず、各チームで働き方のルールを決める方針をとっています。
チームごとのルールに沿っていれば、本人の意志で在宅か出社か選べるようになっているので、気分転換も兼ねて週に1回程度出社して働くという人もいれば、最近では「入社してから半年経って初めてオフィスに来た」という人もいたりします。
──リモートワークにおける課題は何か感じられますか。
通常業務でいうと、もともと離れた場所の社員と仕事をすることが多かったのであまり弊害は感じられないかと思います。オンボーディングなどはもう少し対面でできると良いなと思っています。
ただオンボーディングも、入社のタイミングに合わせて業務用のデバイスや必要なものがすべて自宅に送られてくるので、会社に物理的に来る必要はほぼありません。
社内システムとしても、ソフトウェア面も含めて「会社にいないと働けない」「リモートだから効率が落ちる」といったことがないように、開発者の働く環境づくりにも非常に力を入れて取り組んでいます。
──入社後、部署異動や職域の変更はありますか。
本人の意志によらない異動はほとんどありません。LINEでは基本的に、上層部からいきなり異動命令が出るようなことはなかなかなくて、例えば新規事業を立ち上げる際にどうしてもリソースを集中投下しなければならないといったケースなどがあれば、本人の意向を確認した上で打診することがあるくらいです。
逆に働く個人の意志による異動の機会は開かれていて、社内で常時公開されている募集ポジションに自由に応募ができる社内公募制度もあります。応募先の選考に受かった段階で現所属上長などに開示がされ、時期の調整などを行った上で異動が可能です。
また、マネージャーとの1on1などの際に、本人から異動やロールチェンジの意向などがあったときには、本人の志向やスキルなどを加味して検討や打診を行い部署や役割が変わるケースもある、といった感じです。
「次の10年を作る」。良い意味でのプライドと緊張感、大きなやりがい
──LINEにとってエンジニアはどういった存在ですか。
エンジニアリングがLINEの事業の成功や成長に占める割合は非常に大きく、エンジニア社員も他職種の人たちにとっても、重要なポジションとして認識されています。
ただ、エンジニアだけでできる事業は存在しないので、開発組織も他職種をちゃんとリスペクトして、さまざまなことを共有し合う仲間という意識を持って働いていますし、そうであってほしいと常に思っています。
──「LINEには大企業となったいまでも、ベンチャーマインドが残っている」とお聞きしました。
これに関しては、「何でもトップダウンでやろうとはしていない」ことが大きいかなと思います。
もちろん、トップダウンで順序立てて取り組むべきものもありますが、会社が成長していく上で、よりチャレンジングな取り組みを行うことも内容によっては必要だと感じています。
LINEというサービスはすでに10年プレイヤーとなり、その他のサービスも10年近く展開しているものが続々と出てきています。この10年という節目にあたるいま、よりモダンなサービスに切り替えていくことが重要です。
そのために技術的負債は今が返しどきだと思っていて、エンジニア主導でより綺麗な新しいコードベースを作ることで、全体のモチベーションも上げて新しい機能やビジネスを行う上での良い影響を作っていきたいと考えています。
ただ、新しいコードばかり書いていると技術的に立ち行かなくなってしまうので、バランスを持って開発を進めていきたいとは常に思っています。
──エンジニアがLINEで働く魅力は何だと思いますか。
LINEは日本ではかなり浸透しているサービスなので、良い意味でプライドを持って働けるかなと思います。
多くの方が日常的に利用されるインフラとして幅広く普及しているため、求められているハードルは高く、「LINEだったらここまで作りこまないとだめでしょう」という思いは、エンジニア社員の中に行き渡っていると感じます。
また、LINEというサービスが普及してから約10年が経ち、弊社はいま「次の10年を作ろう」というフェーズにありますし、他にもたくさんの大規模サービスやそれらをさまざまなエンジニアリングで支えている部門もあります。
LINEという資産を持った上で次の未来を構築していくことはゼロから作るよりも難しい面もありますが、この新しいフェーズに差し掛かったいま弊社で働くことは、とてもやりがいがあるし、面白いと感じることも多いと思います。
──一緒に働きたいエンジニア像を教えてください。
個人的には技術に尖っている人が好きで、深く何かを極めて、「このことならあの人に聞こう」みたいな人がいると周りにも刺激になるし、開発組織には必要な人材だと思います。
ただ、会社の大多数がそういった人ばかりだと成り立たないので(笑)。LINEのエンジニアカルチャーとして「Trust & Respect」というキーワードをよく発信しているのですが、仕事相手や仲間をちゃんとリスペクトして、信頼がある中である程度の緊張感をもちつつ、事業やプロダクトのクオリティを上げていく。こういったマインドを持って働ける方が、LINEの開発組織にマッチするかなと思います。
──いまLINEにエントリーしようか悩まれているエンジニアの方に、どんな言葉を贈りますか。
LINEでは本当にさまざまな事業を行っているので、特に中途の方だと「今までの経歴だとLINEには合わないかな」と思う人でも、「じつはそういう経歴がある人が欲しかったけど、これまで少なかった」ということも多々あります。
そのため、カルチャーの異なる場所や異業種での経験も、「LINEがやろうとしていたことのどこかにマッチする」ことがあり得ると思っているので、さまざまなバックグラウンドを持った方からのご応募をお待ちしております。
LINE株式会社 上級執行役員CTO 池邉智洋氏
LINE株式会社 上級執行役員CTO
2001年、京都大学工学部在学中にWeb制作会社で働き始め、同年10月にオン・ザ・エッジ(後のライブドア)に入社。同社の主力事業の一つだったポータルサイト事業の立ち上げから携わる。2007年に新事業会社「ライブドア」として再出発した際には執行役員CTOに就任。その後の2012年、経営統合によりNHN Japanへ移籍。2013年のLINE株式会社(商号変更)を経て、2014年4月に上級執行役員 LINEファミリーサービス開発統括に就任。2022年4月より現職。
インタビュー・文:koko